更新日:2024年11月1日

関西圏の経理人材の求人動向と経理業務効率化を考える

目次

  • ● 関西圏における経理人材の求人動向
  • ● 経理人材を採用することによる中小企業様の想定コスト
  • ● 賃金比較から見る考察①
  • ● 求人動向や最低賃金動向から見る考察②
  • ● 最後に:業務効率化の価値も合わせて考察する

 中小企業の皆様、こんにちは。

 今回は、関西圏の経理人材の求人動向から中小企業様が負担する想定コストをご紹介します。人手不足は建設業や製造業で特に不足していると聞きますが、今回は経理人材に焦点を当てます。また、経理や労務業務などにおけるバックオフィスの業務効率化の重要性について考えます。

関西圏における経理人材の求人動向

 2024年10月29日時点のindeedにおける正社員・経理×関西の求人数は12,000件以上であり、パート・経理×関西の求人数は2,000件以上となっております。

 また、人材派遣になりますが、リクナビ派遣における経理(経理事務)・英文経理×関西の求人数は796件となります。

 同一の会社様が複数の求人を掲載することも考えられますので、求人数=企業数とはなりませんが、関西において数千の企業様が経理人材を探していることになります。

経理人材を採用することによる中小企業様の想定コスト

 次に、経理人材を1名採用することに対する中小企業様の想定コストを時給単位で比較します。(前提条件は求人動向から見た推測値となります)

前提条件

時給

 上図の通り、1ヶ月平均労働時間を173時間とした場合、①正社員の想定コストは1,445円~2,023円、②会社負担の社会保険料の約15%を加味した正社員の想定コストは1,661円~2,326円、③パートの場合は1,300円~1,500円、④派遣の場合は1,834円~2,096円となります。想定通りですが、パートが一番低コストであり、派遣社員、正社員の順にコストが高くなっていきます。(注1)

月給

 同じことですが、月給換算すると、①パート:22.49万円~24.22万円、②派遣:31.72万円~31.72万円、③正社員:28.75万円~40.25万円となります。参考として、最低賃金を1,500円以上にするとの声がありますので、時給1,500円となれば月給25.95万円と計算されます。最低賃金が上がれば、最低賃金よりも高い水準でないと求人できないことも考えられますので、時給1,800円とした場合の月給が31.14万円となります。

賃金比較から見る考察①

 パートと正社員を比較した場合、最低水準のパートと正社員の月給には6万円の差がありますが、皆様が想像されるほどパートの給与は低くないということです(感想には個人差あると思いますが)。また、派遣社員と正社員を比較した場合、最低水準では派遣社員の方が高いということです。

 当然、パート社員が1ヶ月173時間働かれることは少ないでしょうし、派遣社員の方も一定期間の派遣で終了する場合もあるでしょうから、使用者サイドから見た場合のパート・派遣を使用するメリットはあるかと存じます。

 但し、繰り返しになりますが時給・月給換算のみで比較すると正社員とパート・派遣に際立ったコストの違いはありません。だから、正社員の求人数が多いということも合理的なのでしょうが人手不足の問題でなかなか採用できないという状況が現実であると想像できます。

求人動向や最低賃金動向から見る考察②

 2024年10月末時点における正社員の求人数が12,000件を超え人材獲得競争が激しく、最低賃金も上昇傾向が続くことになれば、正社員の給与体系を引き上げなければならない事態が想定されます。

 仮に最低賃金が1,500円以上となり、採用市場における時給の中央値が1,800円となればパートの月給換算が31.14万円となるため、正社員採用における最低月給が32万円以上になると想定されます。現在よりも20%以上のコスト増になる計算です。

 具体的に見ると、現在の会社負担の社会保険料を考慮した正社員の月給28.75万円が36.8万円に増額するため、月額8.05万円の増加、年間96.6万円の増加となります。

最後に:業務効率化の価値も合わせて考察する

 経理人材における雇用形態別の賃金比較や最低賃金の上昇から予想される正社員の給与負担の増加を考察していきましたが、社長様の目線に立つと、費用負担上昇はしょうがないのだろうが、経理というお金を直接扱う重要業務において、経理や人事労務面で一定の能力を有し、業務を任せられる信頼できる人材が欲しいというニーズが最も大きいと感じております。

 経理人材の求人が発生する理由としては、①定年などの理由で経理人員が辞めてしまった、②社長様が求める試算表などが作成されない、または遅い、など、①人員数の減少に起因する場合、②試算表などの求める資料が上がってこない場合、の2パターンに別れると思われます。

 ①の人員減少の場合、求人は解決策として適切ですが、②の求める資料が上がってこない場合は、必ずしも求人によって解決できるかどうかは不明であり、人員補充しても結局同じ問題を抱えた状態が続く可能性が残ります。(余談ですが、試算表の作成が早い会社様は金融機関から好印象を持たれやすいです)

 2つの問題を同時に対応可能な対応策として、バックオフィスの業務効率化があります。ポイントは、①経理に限定せず人事労務を含めた作業を標準化させ、特定のAさんが辞めた場合でも、残ったBさん、Cさんの2名で出来る体制とする。②①の標準化を実施する段階で、求める資料を試算表作成の過程で同時に仕上げられる体制とする、ことです。

 ご存知の通り、現在は数多くのクラウドソフトがありますので、比較的安価に業務効率化を実施することが可能であり、採用に係る広告宣伝費や人件費を考慮するとコストメリットはあると思います。他方、問題点として、「何のソフトを入れたら良い、ソフト入れたけど誰が操作わかっているの、求められている資料を作成するためには経費の締め日などの社内調整も必要なのだけど誰がやるの?」、このような導入・運営に係る業務効率化支援を株式会社第一歩では実施しております。

(注1)イーアイデムによると、「経理・人事・総務」の正社員の平均給与は228,486円、パートの時給は1,464円とされております。また、リクナビ派遣による関西の「経理(経理事務)・英文経理」の平均時給は1,565円と公表されております。派遣の時給については、厚生労働省、「派遣会社のマージン率等について」の「近畿」を参考にして、派遣会社のマージン率を31%として派遣の時給に加算しております。